よくあるご質問

飼い主さんからよく受ける質問にお答えします。
※10年前に掲載した内容もあり、情報が古い場合もございます。お気付きの点がありましたらご指摘、ご指導ください。

飼い主さんの心配事


  • 我家の老犬(柴犬16歳)は、耳が少し遠くなり白髪が増えたくらいで元気に暮らしております。かかりつけの病院から予防注射の案内が届きましたが、先月同い年の近所の犬が予防注射を射ってから体調を崩して入院しているので心配です。予防注射の必要性は理解しているつもりですが不安ですので、射つべきかどうかアドバイスを頂けませんか?


    当院の飼い主さんでも、ワクチンを接種する時に、年齢を理由に心配されるケースは珍しくありません。16歳ともなれば、かなりの高齢ですし 増してやご近所の同い年のお友達がワクチン接種後に体調を崩されたのなら心配されるのも当然かもしれません。昨年まで定期的にワクチンを接種されていたのなら、ワクチンの予定日が過ぎたからといって伝染病に対する免疫が急に無くなってしまう訳ではありませんから、慌てる必要はないので 飼い主さんの不安な気持ちを先生に率直に伝えて、まずはゆっくりと相談にのってもらいましょう。正直な事を申し上げれば、高齢の動物にワクチンを接種するときは獣医師だって不安が全くないわけではありません。ですから、若くて元気な動物に接するとき以上に、丁寧に既往歴やその日の体調を問診しますし、慎重に聴診や検温等の診察をします。もし何か心配な事が見つかれば、必要に応じて検査や治療をおすすめますし、場合によっては数日間様子をみてから、どうするかを考える場合もあります。
    まあ、飼い主さんと獣医師の両方がワクチンを接種するときの一時的な心配と、これから一年間伝染病にかかる確率が非常に低くなる事から得られる安心、そして高齢になり体力や免疫力の低下した現在 ワクチンを接種しない場合の危険性を十分に理解し納得した上で、接種するか否かを決めればよいと思います。当院の場合ペットドックという特典が色々ついてお得な検査のパックがあります。ワクチンを接種する前に細部にわたる健康診断を済ませれば、高齢でワクチン接種を躊躇される飼い主さんにとってよい判断材料になると思います。勿論検査の結果、どこかに異状が見つかればワクチンの接種は少なくとも健康体になるまで延期して、治ったらその時点でまたワクチンをどうするか考えるようにしています。ワクチンを接種するか否かは、ともかく一年に何度か診察を受けて 普段から疑問に思っていたことを教えてもらったり、困っていた事を相談にのってもらい解決する良い機会位に考えて、気軽に病院へ出かけられたら如何ですか?何も診察を受けたからといってワクチンを接種しなければ返してもらえないわけでもないでしょう。

    (補足)
    ワクチンを接種してから体調を崩された犬がおられるそうですが、ワクチンによるアレルギー反応は、接種後早ければ数分、遅くとも数時間で起こります。迅速に治療すれば普通は数時間から2、3日で回復します。高齢になると病院へ出かけた事自体がストレスとなり体調を崩す事もあるかもしれませんし、たまたま体調を崩したのがその時期と重なったのかもしれません。勿論、体調を崩した原因が直接ワクチン接種であった可能性も否定できませんが、全く無関係だった可能性もあることは認識して頂きたいと思います。


  • ヨークシャーテリア(雌、避妊済み、10歳)が、歯肉炎が原因で右頬に穴が開き、失明の危険まであると病院で言われました。治療の為に麻酔をかけて歯石除去する事をすすめられましたが、この子は2歳で避妊手術をした時 麻酔が安定しなくて手術が難航したと聞いています。10歳になった今、麻酔をかけての処置は、なおさら心配です。失明も可哀想ですが、命に関わるかもしれない麻酔をかけての歯石除去をするべきでしょうか?


    ヨーキーは歯石の付着し易い犬種ですから、5~6歳を過ぎると定期的な歯石取りをおすすめするケースが当院では多いのですが、10歳まで一度も歯石取りをしていなければ、かなり大量の歯石が付着していて、口臭もひどいのかもしれませんね。上顎の犬歯は根っこが深くて、その最深部は目の直ぐ下のあたりに位置しますから、恐らくその当たりまで歯石が侵入して周囲の組織を破壊して頬の皮膚が破れて穴が開いてしまったのでしょう。その影響が目の周囲に及べば、その先生の仰るとおり、失明の可能性も低くはないと思いますし、根本的な解決策は歯石の除去と言うか、その犬歯を抜歯してその周辺を清潔にする処置が必要なのだろうと推測します。心配されている麻酔についてですが、体質的に麻酔が安定してかかりにくい子が数パーセントいるのは事実ですし、そのような子は数年経って同様に麻酔をかけた場合でもやはりてこずったケースは少なくありません。ですから、飼い主さんのご心配が的外れの取り越し苦労ではないと思います。年齢を重ねて、心臓や肝臓の機能がより低下しているかもしれませんからむしろ危険性は高まっているのかもしれません。(麻酔をかけての処置を進められているから 当然心臓の状態や肝機能などの再チェックは当然済まされて、それ程悪い状態ではないことを確認されていると思いますが)
    但し、避妊の手術の場合は1~2時間位安定した状態を保つ為にある程度深い麻酔をかけますが、今回の処置の場合は正味10~15分位開口状態を維持する程度の浅い麻酔で十分だと思いますから、身体にかかる負担はずっと小さいかもしれません。ましてや既往歴や年齢を考慮して不測の事態に対する準備も万端整えた上であれば、かなり安全性は高いと言えるかもしれません。そして、このまま放置した場合、失明の心配もありますが、更に状況が悪化すれば咀嚼や嚥下がスムーズに出来なくなったり、細菌が血液に侵入して全身に回る状態(敗血症)になればそれこそ命に関わってくる可能性も そこそこありそうに思います。以上の事を整理すると、確かに麻酔をかけて歯根部の根本的治療を行うのには少なからずのリスクがあるだろうと思います。但し、根治療法をしない場合、命に関わる状況に悪化する可能性も低くはないと推測されます。ですから、飼い主さんの心配な気持ちを先生に伝えて、納得いくまで話し合われれば良いと思います。正直な所、このような状況で、私が相談された場合、100パーセントの安全は勿論保障できかねますが、積極的な方針を選択される事をおすすめする場合が多いかもしれません。理由はもし残念な結果が出たとしても 飼い主さんが御自身を納得させて立ち直られるまでの時間が消極策を選択された場合より短いように思うからです。いずれにしても、一生懸命に考えて出された飼い主さんの結論が、結果に関わらず全て正しいと私は思います。

  • 私の愛犬(ポメラニアン、13歳)は、昨年の夏頃から興奮すると咳が止まらなくなり 病院で「心臓弁膜症」と診断されて、それからずっと薬を飲み続けています。ある程度症状は治まっていますが「死ぬまで薬を飲み続けなければならないでしょう」と言われて不安になりました。薬を長期間続けても副作用や身体への悪影響などは心配ありませんか?

    薬は身体にとって有効な作用があるから投与されるわけですが、残念ながら殆ど全ての薬には何らかの望ましくない作用即ち副作用も併せ持っていますし、内服薬なら消化吸収する胃腸そして薬剤を代謝する肝臓に負担をかけます。私たち獣医師は薬の主作用と副作用、そして身体にかかる負担のバランスを総合的に考えて投与するように心掛けているつもりです。ただ、初めて投与する薬剤や以前投与した事があっても本人の体調の変化や年齢による体力の低下等によっては、主作用いわゆる薬の効果が期待するより小さいこともあるでしょうし、予期せぬ副作用に出くわす事や、胃腸への負担から下痢や嘔吐を伴う事があるかもしれません。ご相談頂いた様な高齢の動物の場合は、まず薬剤を投与する前の段階で、必要と思われる検査を行い特に肝機能等を十分にチェックをします。そして、薬を投与し始めてから一週間目位、更に一ヶ月目位に薬の効果は勿論ですが、副作用の有無、そして問診及び必要に応じた検査により身体への負担をチェックします。それで問題がなければ治療を継続しますし、何らかの異状が見つかればその段階でもう一度治療の方法を検討します。更に治療が順調であっても2~3ヶ月毎に心配な項目だけでもチェックを繰り返します。勿論これは当院の場合であって、病院によって治療を継続する中での効果や副作用、身体への負担のチェックのやり方はまちまちだと思います。正直に先生にご心配な気持ちを伝えられて、相談されれば良いのではありませんか?飼い主さんの気持ちが伝われば、効果や副作用、身体への負担のチェックについての説明もして頂けるでしょうし、飼い主さんのご希望であればより決め細やかに対応してもらえると思います。もし、納得の出来るような説明や決め細やかな対応が望めないのであれば 他の病院に相談されて、納得の出来る病院が見つかればそちらに転院される事をおすすめします。