よくあるご質問

飼い主さんからよく受ける質問にお答えします。
※10年前に掲載した内容もあり、情報が古い場合もございます。お気付きの点がありましたらご指摘、ご指導ください。

避妊と去勢の手術


  • 「猫は避妊の手術をすると太る」と、聞きましたが本当ですか?


    猫も犬同様 卵巣を摘出する事により、各種ホルモンの分泌バランスに多少の狂いが生じます。その為に、表面的な現象としては 一時的に(数週間から長くとも数ヶ月)食欲がそれまでよりも亢進します。この時期に動物の要求に応じて食事の量を増やしてしまうと当然体重が増加してしまいます。ですから、飼主さんが、この食欲は体内のアンバランスによるものである事を理解していただき、可愛そうですが今までどうりの食事量で辛抱してもらってください。そうすれば太ることは無いと思います。しばらくすれば、また今までの食事量で満足してくれるようになると思います。どうしても、食事量が足りなくて辛そうであれば、同カロリーでも量の多いフード(ライトフード等)を一時的に利用されてもいいと思います。


  • 柴犬(1才、オス)を飼っていますが、躾けに失敗してしまったようで、飼い主の言う事を聞かず、咬み癖も全然直りません。去勢の手術をすればおとなしくなりますか?


    去勢手術とは、精巣を摘出して繁殖能力をなくする処置をいいます。結果として繁殖本能に基づく攻撃性はある程度低下すると思われます。但し、その程度は個体差が大きく、とてもおとなしくなる場合もあれば、あまり代わり映えしない場合もある事を知っておいてください。
    去勢手術によるメリットは、他にもあります。摘出により、精巣腫瘍の心配がなくなるだけでなく、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫、前立腺肥大、前立腺癌等の予防にもなります。
    以上の事から、去勢の手術をするか否か、判断してください。まあ、ある程度はおとなしく聞き分けのよい犬になるでしょうし、中年以降に悩まされる幾つかの病気の予防にもなりますから、積極的に考えられたら如何でしょう。
    但し、まだ1歳なら、「躾け」というか 「犬との適切な付き合い方」をあきらめるのは早過ぎると思います。今からでも、犬と飼い主さんの適切な関係についてもう一度勉強し、根気よく努力されれば、きっと今よりもずっと良い関係になれると思いますよ。「適切な付き合い方」については、またご質問頂ければお答えします。


  • 生後三ヶ月の子猫をオス、メス一匹ずつ飼う事になりました。避妊と去勢の手術はいつ頃すればよいでしょうか?


    生後六ヶ月位で体の成長は止まります。即ち肉体的に、そして性的にも成熟しますから避妊や去勢の手術はそれ以降にされたら良いと思います。六ヶ月未満で手術すると、身体の発育が不十分になる場合があり、特にオス猫は尿道が十分に発達せず尿石症等に罹り易くなる心配がありますから気をつけてください。但し、六ヶ月を過ぎればメス猫はすぐに発情して即妊娠、という可能性もありますからあまりのんびりもしていられませんよ。
    尚、「犬や猫は、一度 生理や発情もしくは出産を経験してから避妊した方が良い」等という説があるようですが あまり医学的には根拠は無いと思います。


  • 雑種犬(生後四ヶ月、メス)を庭で飼い始めました。避妊しておいた方が安心だと分かっていますが、自然の摂理に反するようで気がすすみません。避妊手術による身体への悪影響はありませんか?また、妊娠の心配がなくなること以外に何かメリットがありますか?


    犬猫の避妊の手術は、一般的に 開腹して卵巣と子宮を摘出するのですが、若くて健康な動物であれば、手術による体への負担や危険性は低いと思います。当院では、手術の当日は入院していただきますが、翌日には歩いて退院できます。
     手術による身体への影響が全く無いわけではありません。卵巣は女性ホルモンを分泌する重要な器官ですから、その摘出によって体内のホルモンの分泌バランスが狂います。但し、それは一時的で数週間、長くとも数ヶ月で治まりますし、通常の生活には殆ど影響は無いと思います。
     避妊手術によるメリットは以下のようなものがあると思います。
     1)生理による出血が無くなります。(室内犬の場合、部屋が出血で汚れません)
     2)乳腺腫瘍の危険性が低くなります。(乳腺腫瘍は女性ホルモンによって細胞
      の増殖や転移が促進されるからです)
     3)子宮蓄膿症(子宮に細菌が侵入し増殖して膿がたまる病気)、卵巣腫瘍の
      心配が無くなります。(卵巣と子宮を摘出してしまうからです)
     以上の事から、避妊手術は若くて健康な犬猫にとって、身体への負担や悪影響が少なくて比較的安全性の高い手術であり、飼い主さんの意に反する妊娠の心配が無くなる以外にもメリットがありますから、ご家族で十分に相談された上で前向きの結論を出される事を期待します。


  • 猫(日本猫、2歳)に避妊の手術を受けさせたのですが、手術中に死亡してしまいました。原因は麻酔が身体に合わなかったからだろうと言われました。事前に麻酔が体に合うか合わないかの検査等すべきだったのではありませんか?


    動物病院の獣医師としては、答えにくい内容であり 且つストレートな質問を頂きましたので、かなり困っておりますが、逃げずに精一杯のお答えをしたいと思います。避妊の手術の主な目的は、望まれない妊娠を防ぐ事であり 結果的に乳腺腫瘍や子宮蓄膿症等の恐ろしい病気を未然に防ぐメリットもあります。つまり原則的に健康な動物に施す手術でありますから、例えば腫瘍の摘出手術のように健康体になる為に行う手術とは、手術の周囲の状況が全く異なります。相談者が仰るように事前に十分な検査を実施すれば 何らかの異状を見つけることが出来たかもしれません。その異状に対して、先に治療して健康な状態になってから手術すれば、無事に終えられたのかもしれません。治療をしなくても手術する獣医師が異状を認識していてそれなりの準備をしていたら、術中に猫は死亡せずに済んだかもしれません。勿論、急ぐ必要の無い手術ですから、とりあえず延期若しくは取りやめるという選択肢もあったかもしれません。只、当院に若くて元気な猫が来院して 避妊の手術を希望されたとしたら、過去の病歴や現在の状態等を問診し、一般的な診察(体重や体温を測り、目や耳、歯や歯茎、皮膚や毛、爪、肛門等の状態をチェックし、聴診器で心音・呼吸状態などを確認、全身の触診等)をして、特に心配な点が無ければ、それ以上の検査等はせずに手術の日程を決め準備を始めるでしょう。もし、猫がかなりの高齢であったり、著しく肥満若しくは削痩した状態であったり、診察して何か心配な点が見つかれば、飼い主さんに説明して了解の上で必要に応じて検査をするかもしれません。相談者の猫の場合、先生から検査の必要性等の説明が無かったとしたら、問診や診察で特に心配な点は見つからなかったのだと思います。もし手術が腫瘍の摘出の場合なら、飼い主さんに説明し了解を頂いて転移の可能性を危惧してレントゲンを撮影するでしょうし、全身的なダメージや状態をチェックする為に血液検査を行うであろうと思います。健康である事が前提として行う避妊、去勢の手術で、何も異状が見つからないであろうと推測される検査を実施する事は、レントゲン撮影や採血による猫への負担(大人しい猫なら大したことはありませんが、結構暴れる子が多いです)、手術費用に加えてかかる検査費用という飼い主さんへの負担を考慮すると 病院としてもあまりもおすすめ出来ません。現実的な話をすれば 手術の前に検査をすすめ その費用まで説明したら 丁寧で親切な病院と判断される飼い主さんもいらっしゃるかもしれませんが、もっと安上がりでスムースに手術をしてくれる病院探される飼い主さんが多いと思います。正直に申し上げますと、当院でも、避妊、去勢の手術で亡くなった動物はいますし、麻酔などが安定しないので手術を中止したケースもあります。残念な事ですが、同様の悲しい事故が起こっている病院は少なからずあると思います。私は、避妊手術中の事故が起こって以来、同様の手術をする場合、健康診断的な意味合いも含めて術前検査をする事を簡単にですがおすすめしています。数百人の飼い主さんに説明しましたが検査を希望された方は現在の所 二名だけです。相談頂いた飼い主さんも、もし術前に万が一の危険性を探す検査をすすめられたとして、快く承諾されたでしょうか?そしてもう一つしっかりと認識していただきたい事ですが、検査を受けたとしても、死亡原因が確実に見つかる保障はどこにも無いという事です。
    人間の場合どのような手術に対してどの程度の術前検査が実施されるのか分かりませんが、動物の場合、残念ながらある程度の限界がある事は理解して頂きたいです。私達獣医師は、この様な不幸な事故が起こらないように出来る範囲で精一杯の準備をし、集中して手術に取り組んでおります。とは言っても、人間のすることであり、生き物を相手にする事ですから、絶対に安全な事など無いと思います。自分の大切なペットを失った飼い主さんには、このような事情を100パーセントではなくても、その何割かを理解し納得していただくしかないと考えますが、如何でしょう。


  • 近所の人(住所、名前を知っている)が動物(主に野良猫)を虐待しています。最初は石を投げて威嚇する程度でしたが、最近は石をぶつけて命にも関わりそうなケガを負わせているようです。どの様に対処すればよいでしょう?


    まず最初に、「動物の愛護と管理に関する法律」から この質問に関連のありそうな部分を抜粋して簡単に説明しましょう。
    (1)愛護動物をみだりに殺したり、傷つけた者は、一年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処す
    (2)愛護動物に給餌、給水を怠り衰弱させる等の虐待を行った者は、30万円以下の罰金に処す
    (3)愛護動物を遺棄(保護義務を怠り、ほったらかしにしておく)した者は、30万円以下の罰金に処す
    「愛護動物」とは、牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる、その他に人が占有する哺乳類、鳥類、爬虫類をいう

    如何ですか?こうして読んでみると、結構身近で、厳しい法律だと思いませんか。ご質問にある方の行為は、この法律に違反している可能性があるのかもしれません。
    但し、その人がその野良猫によって少なからぬ被害を被っているかもしれませんし、その人なりの言い分も聞いてみないと客観的な判断は出来ません。ご近所の方なら、本来は直接話しに行かれて、その行為の原因を確認されたうえで穏便に諫められるのが簡単で良い方法かもしれません。ただし 逆恨みされたりして今後の人間関係等に問題を残すかもしれませんから、まずは自治会等で地域の問題として取上げてもらい、皆さんで話し合ってみられたら如何でしょうか。何とか猫を拘束出来れば、避妊若しくは去勢の手術を施して、しかるべき施設へ引き取ってもらうような形での解決策は見つかるかもしれません。
    それでも、上手く解決しないようなら 警察に相談にいかれたらどうでしょうか。以前は、警察はこの種の問題に対して非常に腰が重かったようですが、昨今は動物を虐待する人間が、その対象を人間、特に子供にエスカレートさせるケースがあるので、割と素早く対応して頂けるようです。
    動物虐待に関するマスメディアによる報道は 以前に比べて少なくなっているみたいですが、「動物の愛護及び管理に関する法律」に違反して、有罪の判決(執行猶予付きの懲役等)が下されているケースは、全国的にみると 少なからず起こっています。
    野良猫については様々な問題が、当院の患者さんの周囲でも起こっています。猫の好きな方なら、本来自分の家で面倒をみてあげたいけれど、事情があって飼えなくて、でもほっとけないで つい餌を与えてしまう。こんなケースはよく見かけますし、その行為は善意によるものだから、非難したくありません。
    しかし、客観的に判断すると 野良猫に餌を与える行為は、見知らぬ人に少なからず迷惑をかける可能性が高いのでおすすめできません。
    例えば、猫がとても恐くて、道端で見かけるだけで足が竦む方もいらっしゃるし、猫によって大切にしている庭に排便されたり穿り返されたりして大変憤慨されていらっしゃる方も、存知上げています。ところが、猫の好きな方なら 可愛い猫を見かけたら「今日はいいことがありそう。」と思うかもしれないし、庭に猫の糞を見つけてもにっこり笑って後始末が出来るのかもしれません。
    この様に人間とは同じ現象に対して正反対の感情を抱くケースも珍しくはないのかもしれません。ですから、この種の問題には画一的な結論ではなくて、その場の事情に応じて柔軟な姿勢で取り組む事が大切だと思います。
    私も動物に関わる仕事をする者として、この様な問題に少しでも役に立てることはないかと日頃から考えておりますが、現在出来ている事は、この様なご質問にあまり有効でもないお答えをする事と、野良猫の避妊及び去勢の手術の費用を半額当院で負担させて頂く事(無論 当院で手術をした場合で、残りの半額は猫を連れて来られた方に負担して頂きます)くらいです。野良猫の避妊又は去勢をお考えの方は、お役に立てるかもしれませんから ご連絡ください。