よくあるご質問

飼い主さんからよく受ける質問にお答えします。
※10年前に掲載した内容もあり、情報が古い場合もございます。お気付きの点がありましたらご指摘、ご指導ください。

猫の困った行動


  • 日本猫(雄、3才)を飼っていますが、2歳を過ぎた頃から急にあちこちにおしっこをかける「スプレー行動」をとる様になりました。それまでは普通にトイレでしていたのに どうして急変したのでしょうか?そして有効な対策があれば教えて下さい。


    躾けの出来ている猫の場合、排尿は決められたトイレで 座って水平な面に向かって行います。スプレー行為をする猫の場合は通常のトイレでの排尿も行いますが、それとは別に、トイレ以外の場所で立ったまま後ろ向きに少量の匂いの強い尿を垂直な面(壁や柱)に向かって排泄します。発生頻度は雄の方が多いといわれていますが、雌でもみられます。猫がスプレー行為をする主な原因は次の二つですから、それぞれに即した対策を考えましょう。
    一つ目は、雄猫が性的な本能により、雌へのアピールや、他の雄猫に対するテリトリーを誇示する為にスプレー行動を行っているのであれば、解決策は明快で去勢の手術をして雄としての本能から開放してあげれば 大部分が解決するでしょう。
    二つ目は、猫が何らかの精神的なストレスを受けて、その不安を紛らす為にスプレー行動をする場合です。これは、具体的には千差万別で、例えば家の改築、引越し等により生活環境が大きく変化した場合です。但し、もっと些細な変化(新しい家具が届いたり、部屋の模様替えをする等)でも、デリケートな猫ならストレスと感じる場合があります。また、他の猫によるストレス、例えば同居している猫と急に仲が悪くなったり、庭や窓際に外猫が訪れるようになる事が精神的なストレスとなる場合もあります。それから、家族構成の変化 即ち赤ちゃんが生まれたとかお祖父ちゃんが亡くなったとか,娘さんが嫁いだとか、同種の猫に限らず新しく動物を飼い始めた、等の変化をストレスと感じる場合もあります。他にも、隣の家が立替工事を始めたり、飼い主さんの仕事が忙しくなった為にかまってもらえる時間が減少したり、夏場の雷や近所の公園の打ち上げ花火等も頻繁であれば、それをストレスと感じるかもしれません。とにかく、ストレスを切っ掛けにスプレー行動をとっているのであれば、それを取り除いてあげるしか解決策はありません。
    ご質問頂いた猫もある時期から急にスプレー行動をとるようになった訳ですから、その時期に起こった何らかの現象がストレスとなっているのではないでしょうか?もう一度よくその時期の事を思い出してみてください。
    但し、簡単に取り除けるストレスはそれで解決できますが、例えば引越しが原因としたら、猫の為に元の家に帰るわけにはいかないでしょうし、とても可愛がってくれていたおじいちゃんが亡くなられたのなら生き返っていただく事も出来ません。
    そのような場合には猫のストレスを和らげて スプレー行動を減少させる方法として、精神安定剤の内服、若しくはフェイシャル・フェロモンの類縁化合物の散布があります。精神安定剤の投与は、薬剤の効果に持続性がないので 毎日続ける必要がある為飼い主の労力と猫本人の苦痛が大きいので 当院ではあまりおすすめしていません。フェイシャル・フェロモンとは、猫の頬から分泌され親密化マーキングつまり自分のお気に入りに対するマーキングを目的とするフェロモン(フェロモンとは動物が分泌し、同種の個体に特有の反応を引き起こす物質)です。従って、スプレー行動を起こす場所に散布すると自分のお気に入りの場所として認知する為、完全には無くなりませんが、スプレー行動を慎むようになるわけです。動物病院にありますから、必要に応じてお求めください。
    <要注意>
    猫がトイレ以外の場所に排泄するケースで、「不適切な排泄」と言うのがありますので、スプレー行動と混同しないように注意が必要です。特徴を比較すると次のようになります。

    スプレー行動 不適切な排泄
    トイレの使用状況 通常の排尿排便に使用 全く使用しない
    排泄物の量 少量 多量
    排泄時の姿勢 立ったまま排泄 座って排泄
    排泄面の方向 壁等の垂直面 床等の水平面

    猫が「不適切な排泄」をする原因は、以下の様な物があります。

     1)トイレが不潔である場合で、猫はきれい好きなので、段々トイレ以外の場所で排泄するようになってしまいます。

     2)それまで機嫌よく排泄していたトイレの場所や、紙砂や容器を急に変更したりすると、不満や不安を覚えて、別の場所で排泄するようになる場合もあります。

     3)トイレの設置場所が猫にとって落ち着けない場所である場合で、他に落ち着いて出来る場所を求めてしまいます。

     4)膀胱炎等の尿路系の病気で正常な排尿が出来なくなっている場合で,これは気付いたらなるべく早く病院へ行き治療してください

    対策としては、猫のトイレは小まめに掃除してあげましょう。多頭飼いする場合は、猫の頭数よりトイレの数を多くする事が望ましいそうです。猫のトイレに対するこだわりは人間の想像以上ですから、トイレの位置を決める時には将来的なことも考えて変更しなくてもよい場所を選びましょう。どうしても変更する必要があるなら、少しずつ猫が気付かないよう移動しましょう。排泄する時は、人間もそうですが猫も一息つきたいわけですから、ほっとできる場所を捜してあげて下さい。


  • うちには猫を3匹(全て雄で去勢していない)飼っていますが、そのうちの一匹が、爪とぎが大好きで、頻繁に家の中のいろんな所で行う為に、甚大な被害を受けています。叱っても効果がありませんし、市販されている爪研ぎ用グッズには興味を示しません。どうすればよいでしょう?


    まず、最初に考えてあげて頂きたい事は、そのような「スプレー行動」が、猫にとってごく当たり前の健康的な行為であるのだけれど、たまたま人間との共同生活においては、人間にとって不都合な行為である、と言う事です。ですから、それらを鎮める為の対策を幾つか述べますが,元々は「猫が可愛くて好きだから一緒に暮らそう。」と飼い始めた時の気持ちを思い出して頂けたなら「多少の迷惑は寛容に受け止めよう」という覚悟も出来るのではないでしょうか?次に、犬が、飼い主さんにとって困る行為を繰り替えず場合は、困る行為する度に根気よくそして厳しく叱り、困る行為を辛抱できた時には大げさな位に褒めてあげる事によって、少しずつ止めさせていく事が出来るケースが多いのですが、猫は叱っても反発を招く事が多いし、褒めても犬ほど喜びませんから、叱って 褒めて躾けるやり方はおすすめ出来ません。ですから、猫が爪を研ぐ主な二つの理由それぞれに対して、止めさせる方法を考えてみましょう。一つ目は、猫の爪は人間と同様に伸び続けますから、一定の長さと鋭い形を維持する為に爪を研ぐわけです。この理由に対しては、飼い主さんが、小まめに爪を切ってあげれば研ぐ必要が無くなりますから、その行為が減少すると思います。爪切りは人間用の爪きりで代用できます。もし嫌がって家で出来なければ、動物病院で処置してもらえますから、定期的に通ってください。二つ目の理由は、スプレー行動と同様に「自分のテリトリーとして誇示する為」である場合で、このケースではなるべく高いところに傷跡を残そうとする傾向があるようです。定期的な爪きりで、改善が見られなければ、こちらの理由が考えられますから、出来れば去勢の手術をおすすめします。雄としての本能が弱まれば、テリトリーに対する執着心も薄れて、爪を研ぐ行為は減少すると思われます。動物病院によっては爪を除去してしまう手術を積極的にすすめる場合もあるそうですが、もし爪が無くなると人間は生活にかなりの支障を来たすと思いますし、猫も同様だと推測されますので、私はその様な手術をおすすめ致しません。