よくあるご質問

飼い主さんからよく受ける質問にお答えします。
※10年前に掲載した内容もあり、情報が古い場合もございます。お気付きの点がありましたらご指摘、ご指導ください。

狂犬病


  • 愛犬と泊まれるホテルをさがしたら、狂犬病ワクチンの接種済を条件とすると事、混合ワクチンの接種済を条件とする所、特にその様な条件のない所が見つかりました。うちの子は子犬のときに二回混合ワクチンを接種しましたが、その以外は何もしていません。どの様な条件のホテルが便利で安心でしょう?


    正直申し上げて私はペット同伴で旅行したり、宿泊した経験がありませんので、どのような条件の所が安心か利用客としての意見を申し上げる資格はありませんが、飼い主さんから そんな施設についての様々な情報が入ってきますので 獣医師としての経験と知識を合わせて 解かる範囲でお答えしたいと思います。
    愛犬と泊まれるホテルに限らず、ペットホテルや、愛犬と飼い主さんが一緒に遊べる施設等でも予防注射の接種済を条件としている場所は少なくありません。そこで、まず犬の予防注射の意味合いを もう一度考えてみましょう。狂犬病ワクチンは、犬から人間にも感染して 発病すれば100パーセント死亡する恐ろしい病気を予防する注射であり、接種する事が狂犬病予防法で飼い主さんに義務付けられています。義務を果たさないと、犬は拘留、処分されますし、飼い主さんには罰金が科される事が定められています。注射と同時に登録され鑑札が発行されますので、犬同士若しくは人間とのトラブルが発生したときにその重要性を痛感されるかもしれません。例えば 登録されていない犬が 登録されている犬に咬まれた場合、咬まれた犬は被害者であっても、登録されている犬の方が強い立場になりますから、治療費の請求は難しいでしょう。次に混合ワクチンですが、メーカーによって5~9種類の病気(ジステンパー、パルボウィルス感染症等)をまとめて予防する注射で、実際にかかる可能性のある病気を防ぐ為の、つまり人間と同じ意味の予防注射です。
    それでは、犬と飼い主さんが一緒に宿泊できる施設が なぜ予防注射について一定の条件を設定する場合が多いのか考えてみましょう。犬を預かる側の立場としてまず考える事は、犬を健康な状態で預かり、無事にそのまま飼い主さんに返す事です。宿泊施設内では、初対面の人間や犬達が接触する機会が少なからずあると思いますが、犬も人間同様に、或いは人間以上に興奮しているかもしれませんから、何らかのトラブルが起こる危険性は低くないと思います。万が一 何かの事故が起きたとしても、狂犬病ワクチン接種の必要性を理解している飼い主さんどうしであれば トラブルを最小限に食い止める事が出来るでしょう。人間もそうですが、犬にとっても旅行は、普段の生活とリズムも違うし 凄く刺激が多いので緊張状態が継続すると思います。飼い主さんと一緒に過ごせるので楽しくはあるけれど大きなストレスがかかり続けます。当然普段よりも体力や免疫力が低下しますから、伝染病にも罹り易くなるでしょう。ですから、普段以上に混合ワクチンによる免疫力の強化が重要になる訳です。
    以上の事から、犬を旅行に連れて行って一緒に宿泊して楽しい時間を過ごす為には、両方のワクチンをきちんと接種して出かけれることをおすすめします。そして宿泊施設としても、両方のワクチンの接種済みを条件とする所には、犬に対する責任感と病気に対する安心を重要視される飼い主さんとその飼い犬が集まる事が期待されますから、安心して宿泊できるのかもしれません。勿論その様な宿泊施設であろうと、どの様なトラブルが起こるか分かりませんから、慎重に行動される事が大事だと思います。最近はインターネットの掲示板などを利用して具体的な宿泊施設の名前をあげてアドバイスを求めると僅かの時間で かなりの数の体験談や他の施設の情報等が得られたりしますから、その様なサイトを利用してみるのも、情報収集には良いかもしれません。


  • 長年犬を飼っていますが、日本で狂犬病は既に存在しない病気なので 予防注射を受けさせた事がありません。特にこれまで不都合もなく 罰則をうけた事もありませんが,必要なのでしょうか?


    狂犬病予防法という法律において、犬の飼い主は、犬を所有してから(生後90日以内の場合は90日を経過してから)30日以内に所在地の市町村(区)長に登録を申請して、鑑札の交付を受け、犬に着ける事、そして毎年狂犬病の予防注射を受けさせて,その注射済み票を犬に着ける事が義務付けられています。この義務を果たされていない(鑑札や注射済み票を身に着けていない)犬は、狂犬病予防員によって拘留され、場合によっては処分されます。又罰則として、義務を果たさない飼い主は、20万円以下の罰金が定められています。予防注射を実施しないだけで、場合によっては殺処分されるなんて、ひどい法律だと思われるかもしれませんが、致し方ありません。何故なら、狂犬病予防法も狂犬病の予防注射も犬の為のものではなくて,国民のの安全を守るためのものだからです。ですから、日本でもう50年以上発生していなくても、世界中で毎年数万人が死亡している現状では、この法律が改正される事は当分ないでしょう。但し、予防員によって犬が拘留されたケースや、飼い主さんが罰金を支払った事実は聞いた事がありません。ですから、実質的な罰則は無いに等しいのが現実です。しかし、「現実的な罰則が無いから、法律に定められた義務を果たさなくてもよい」という考え方は、恥ずかしいと思いませんか。「自動車運転時のシートベルトの着用」の様に罰則が重くなって、やっと遵守率が高くなるなんて情けない事だと思います。それに、公的な罰則が無くても、もし飼い犬が人間若しくは犬とトラブルを起こした場合、登録して予防注射済みの場合に比べて、登録も注射もしてない場合では立場が明らかに不利になります。罰則の有無や、損得に関わらず、飼い主さんの義務として認識して頂いて一人でも多くの飼い主さんが登録と定期的な予防注射を実施される事を私は獣医師として期待しております。