よくあるご質問

飼い主さんからよく受ける質問にお答えします。
※10年前に掲載した内容もあり、情報が古い場合もございます。お気付きの点がありましたらご指摘、ご指導ください。

犬の心臓病


  • 12才の雑種(去勢済み)を飼っていますが、先日かかりつけの病院で「弁膜症という心臓病なので、一生薬を飲み続けなければならない。」と 言われました。病気と薬について 具体的な説明を求めましたが、曖昧にしか答えてもらえませんでしたので、どんな病気にどのように治療するのかを 教えて頂けませんか?


    心臓が拡張と収縮を繰り返して 静脈から血液を吸いこみ 動脈に送り出して血液を体内で循環させるポンプである事はご存知だと思いますが その血液の流れをスムーズにする為に心臓の各部屋(左右の心房と心室)と血管との接続部分に弁があり 血流の逆流を防いでいます。その弁に異常が生じて血液の逆流が起こっている場合、心臓弁膜症といいます。特に重要なのが左心房と左心室の間にある僧帽弁の閉鎖不全症で症状としては運動機能の低下、削痩、のどの詰まるような咳、肺水腫等が現われてきます。原因は先天的な場合もありますし、心拡張等の後天的な場合もあります。
    治療は、生活の改善(運動と興奮の制限及び食事管理)が前提ですが 外科的治療(手術)と内科的治療(主に内服薬)があります。(不勉強の為 手術については細かい説明が出来ません。)
    内服薬としては、その病気の進行状況や年令、体質等によって異なりますが、以下のような薬を組み合わせて処方されると思います。 
     1)ACE阻害薬  ホルモンによって起こる血管の収縮と その為に起こる血圧上昇による心臓の負担を 取り除いて心臓を楽にする為の薬で 心臓の治療では最初に投与される事の多いようです
     2)利尿剤  尿量を増やす事により、血流量を減少により肺水腫を減少させ 血圧を下げて 心臓の負担を軽くします
     3)強心剤  心臓の筋肉に直接作用して心臓の収縮と拡張をゆっくりと確実に起こすよう作用します 不整脈等の時に用いられます
     4)気管支拡張剤  心臓の肥大や拡張により気管が圧迫される場合もありますし、血液循環量が減少すると、過呼吸により酸素の血液への取り込みを増加させようとして負担のかかる気管や気管支を 拡張させて呼吸を楽にして咳を鎮める薬です
    他にもβーブロッカー(心筋の過剰な運動を抑えて酸素消費を抑制する薬)、冠血流改善剤(冠状動脈の流れを改善する薬)動脈血管拡張剤(動脈を拡張して血流の改善を促す薬)等など多種多様にあります。
    以上のような薬を 患者さんによって、そして患者さんの状態の変化に応じて処方される事になると思います。
    私の拙い説明では具体性にかける事もあり 十分に理解して頂けなかったかと思いますが、心臓の病気やその治療については飼い主さんの十分な理解と納得を伴わないと 長続きしないと思います。ですから、説明を求めても得心の得られない病院は少なくともこの場合の患者さんにとってよい病院とは言えないでしょう。他にもっと信頼できる病院を探される事をおすすめします。


  • うちの子(シーズー10才避妊済み)は、「太り過ぎ」と病院で言われたので 大好きなお散歩を頑張って ダイエットしようと思ったのですが、特に夏場はすぐに苦しそうに座り込んで歩かなくなり、段々散歩を嫌がるようになってきました。頑張って散歩を続けたさせた方がよいのでしょうか?


    診察してみないと自信を持ってお答えできませんが、(例え診察し 十分な検査を実施しても自信を持ってお答えできない事も多いのですが)10歳の肥満傾向の犬が暑い時期に大好きな散歩を拒否するとしたら、運動機能障害か心臓病を疑います。まずは、かかりつけの病院で足腰について十分な診察を受け、外傷や病気(例えば足裏のトゲや膝の脱臼、腰のヘルニア等)がないか確認しましょう。運動機能に問題がなければ、心臓について調べましょう。もし心臓に原因があって、大好きな散歩を拒否するのであれば、聴診だけで心雑音等の異常が確認されると思います。もし異常が確認されたら、その程度によって血圧、レントゲン、心電図、超音波等の検査を受けられる事をおすすめします。診断結果により治療についての指示があると思いますから出来るだけその指示に従ってください。飼い主さんとしては、例えば発作が起きる等の解りやすい症状があればともかく、殆ど症状もない段階から治療を継続するのは大変な事だと思います。しかし、実はこの時期の治療と生活習慣の改善こそが寿命を延ばす為に重要なのです。勿論、症状が現われてからも治療をしますがそれは残された寿命の辛苦を和らげるためのものである事を理解して頂いて 症状が現われるまでの時期の治療を頑張っていただきたく思います。

    一般的に心臓の悪い犬に守って頂きたい生活での注意事項を書いておきますので参考にしてください。

    1)運動は必要最低限度にするよう心掛ける。
    散歩については出来るだけ短距離をゆっくりとのんびりと済ませましょう。仲の悪い犬と出会って興奮したりしないように、コースや時間帯にも気をつけましょう。本人が途中で帰りたがったり、最初から出かけたくない様子のときは止めておきましょう。

    2)出来るだけ興奮しないように心掛ける
    怒ったり 恐がったり 驚いたりする事等は、飼い主さんのちょっとした注意と努力で避けられる事が多いのですが、喜んだ時にも注意が必要です。大好きな飼い主さんが帰って来た時に喜びすぎて発作を起こすようなケースもありますから、とりあえず抱っこでもして落ち着かせてあげましょう。

    3)獣医師の指示に従って食事を管理する
    特に室内で飼っている場合 一番難しいかもしれません。人間と同様に塩分を制限された食事になりますから 最初は食べづらくて本人もそれをみている飼い主さんも結構辛いかもしれません。但し 慣れるまでの辛抱ですから是非頑張ってください。


  • うちの犬(柴犬、メス、8才)は 怒ったりして興奮すると、舌が紫色になり ゼーゼーととても苦しそうです。10分位すると治まってしまい、普段は元気にしていますが、病院でみてもらった方がよいでしょうか?


    人間は 喜んだり、怒ったり、驚いたりして感情が高まると 酸素がたくさん消費されるので心臓は大量の血液を送り出そうとして頑張ります。だから、興奮した時に心臓がドキドキするのを感じるわけです。犬も同様で興奮すると 心臓が普段より頑張るわけですが、舌が紫色になるのは、酸素を十分に含んだ新鮮な鮮紅色の血液が不足し 二酸化炭素を多く含むどす黒い血液が貯留している事を示しています。つまり、心臓が血液を送り出すポンプとして 十分に働いていない状態なのです。年齢的にも心臓病の症状があらわれる時期を迎えていますから、一度病院で十分んな問診と必要に応じて検査(聴診、血圧測定、レントゲン撮影、心電図等)を受けられた方が良いように思います。心臓は一旦悪くなると、元の正常な状態には殆どもどれませんから、悪くなったなりの心臓と如何に上手に長くお付き合いしていくかを考えるしかありません。ですから、一日も早く、心臓の状態を確認して、それに合わせた生活習慣の改善、食餌療法、必要に応じて薬物による治療を始めることが大切ですし、それが一日でも快適に長生きする事につながると思いますよ。