よくあるご質問

飼い主さんからよく受ける質問にお答えします。
※10年前に掲載した内容もあり、情報が古い場合もございます。お気付きの点がありましたらご指摘、ご指導ください。

犬のブルセラ病


  • うちで飼っているゴールデン(4歳、メス)は昨年流産しました。 ひょっとしてブルセラ病かもしれませんが、検査して陽性なら殺処分をすすめられると噂に聞いて躊躇しています。有効な治療法やワクチンによる予防法はないのですか?


    流産の原因はブルセラ病に限りませんが、今後再び交配をお考えになるなら、一度病院で検査を受けて、ブルセラ病か否かを確認しておかれる事は有意義な事だと思います。もし、検査を受けて陽性の結果がでたとしてもペットとして飼われている犬に対して、病院から殺処分をすすめられる事はないと思います。万が一すすめられたとしたらブルセラ病の感染源となる事を危惧しての事だと思いますが、感染源となる事は防げますから、処分する必要はありません。犬のブルセラ病の治療は まず複数の抗生剤を数週間連続投与します。併せて不妊手術(メスなら避妊、オスなら去勢の手術)を実施します。これで大部分の細菌は死滅して子宮からの分泌物や尿などに排菌しなくなります。ただ細胞内に僅かに生き残った細菌が再び増殖して再発する確立が非常に高いので、完治しない病気と言われています。但し、定期的に検査して必要に応じて投薬を継続すれば、感染源となる心配はありませんから日常の生活が送れる病気です。
    「犬がブルセラ病にかかったら殺処分」と言った誤った情報が流れたのは、以下に述べるような事情があるからかもしれません。
    ブルセラ病は犬の交尾や出産が頻繁な繁殖施設内で、流行し蔓延する事が多い病気です。繁殖施設では、メス犬は某大臣の発言ではありませんが、子犬を産む機械のような存在であるのかもしれません。その機械(メス犬)が壊れて(つまりブルセラ病にかかって)、修理しても直らない(要するに治療しても完治せず、正常な出産が期待出来ない)なら、廃棄処分(殺処分)という事になるケースもあったかもしれません。それに加えて、大阪にある犬の繁殖業者が経営破綻し、放棄された繁殖施設に多数の犬が残されていて、ブルセラ病が蔓延していた事件が今年になって報道されました。そして行政(大阪府)が解決策として、検査でブルセラ病陽性の犬を全て殺処分する計画を発表しました。動物愛護団体などから反対する声があがり、取敢えず延期されましたが、今後どの様になるか分りません。これらの事が背景となって、誤った噂話になっているのではないかと想像しますがくれぐれも惑わされないように注意してください。
    最後に、この病気の予防についてですが、ワクチンは残念ながら犬用も人間用もありません。日常の生活の中で 流産した胎児や悪路、子宮分泌物との接触なんて、あまりないと思いますが、もしそのような状況に遭遇する事があれば、犬近づけないように十分に注意して頂く位で、この病気は予防できると思います。

    <補足>
    ブルセラ病には潜伏期間があり、その最中に検査すると結果は陰性と出ます。ですから、数週間以内に感染した可能性のある犬の判定をする場合、数週間の間隔をあけて少なくとも二回検査をしないと陰性とは断定できません。


  • 我家は、犬を二匹(柴犬とポメラニアン:両方ともメス)飼っており、妻が現在妊娠6ヶ月です。犬のブルセラ病は流産を起こす病気で 人間にも伝染すると知って、心配になりました。このまま犬を飼っていても心配ありませんか?


    犬のブルセラ病は犬から人間に感染する人畜共通伝染病のひとつです。但し、この病気の細菌は流産した胎児や悪路、子宮分泌物そして尿中に存在しますから、それらと接触機会の多い繁殖業者や獣医師がかかる確率の高い病気で、一般の飼い主さんがかかる確率は非常に低い病気です。それでも 心配であれば、動物病院で飼われている犬の血液検査を受けましょう。結果が陰性なら、当面のブルセラ病についての飼い主さんの心配はなくなるでしょう。もし、陽性であったとしても慌てる必要はありません。先生の指示に従って適切な治療を始めましょう。そして正常な出産は期待できませんから避妊手術を受けてください。残念ながら、ブルセラ病は治療しても完治しませんが、定期的な治療を継続すれば、ブルセラ病を人間にも犬にも広める可能性はなくなります。
    <注意>
    もし犬が死流産をした場合は、人間へ感染する心配がありますから、胎児や悪路等に直接触らないように十分な注意が必要です
    人間が犬からブルセラ病に感染した場合、発熱や筋肉痛等の軽い風邪に似た症状がみられる位で、ブルセラキャニスという細菌はブルセラ属のなかでも最も病原性の弱い種類で重篤な症状は極まれと言われています。人間の治療法としては複数の抗生物質を数週間連続投与する事により完治すると言われています。1999年から報告義務のある伝染病に指定されていますが、国内で5例報告されているそうです。尚、人間から人間への感染の可能性はないと言われています。私は獣医師ですので、人間のブルセラ病についての記述は、インターネットからそのまま引用していますので、「・・・・そうです。」とか「・・・・言われています」という表現になってしまいます事は御理解ください。


  • 最近、ニュースで犬のブルセラ病について知りました。初めて耳にする病気なので、どの様に感染して、どの様な症状を起こすのか教えて下さい。


    ブルセラ病と聞けば、私はまず牛や豚、羊等のいわゆる家畜に流産を起こす伝染病が頭に浮かびます。犬にもブルセラ キャニスという細菌による伝染性の病気がありますが、普段ペットとして飼われている犬を診察するときには、あまり頭に浮かんできません。(流産を起こした犬を診察するときは別ですけど)
    その理由はブルセラ病の感染経路と症状を説明すればお解かりいただけると思います。
    ブルセラ病に感染している犬は精液や尿、流産した胎児、悪路(おろ=出産後に胎盤がはがれたあとからの出血や浸出液が生理の様に陰部から滲出したもの)、子宮分泌物等に細菌が存在しますから、それらと別の犬が接触することにより傷口や粘膜から、若しくは経口的に細菌が体内に侵入して感染します。ですから、日常生活の中で例えば、犬同士がお散歩ですれ違って、ご挨拶を交わしたくらいでは感染する心配はありません。細菌が体内に侵入して数週間の潜伏期間を経て感染しますが、一般的な病気の症状(元気消失、食欲減退、嘔吐、下痢、発熱等)は殆どみられなくて、オスは精巣炎、メスは死流産、子宮内膜炎等を起こします。
    以上の事からお解かりいただけると思いますが、ブルセラ病は多数の犬が同居して交配や出産の機会が頻繁な特殊な環境、つまり繁殖業を営まれる施設等では感染が広まり、蔓延する可能性があります。けれども、普通にペットとして飼われている犬では現実的にあまり誰かからうつされたり、誰かにうつしたりする事のない病気だと思います。
    勿論 犬を購入された場合であれ、拾ったり貰ったりされた場合であれ、飼い主さんのもとに届くまでにブルセラ病に感染している可能性が全くないわけではありません。ただ、ペットとして飼われる犬なら 生涯に一度も交配や出産を経験しない犬も多いわけで、そういう場合はこの病気にもしかかっていたとしても気付かずに一生を終える事でしょう。
    もしも、飼い主さんが交配して出産をさせたいが、ブルセラ病による死流産が心配ならば、検査を受けてみるのもよいでしょう。但し、極端な事を言えば、交配する事によりブルセラ病に感染する可能性もあるわけですから、あまり過剰に心配しても意味がないと私は思います。不幸にも死流産を起こした場合は、検査を受けられる事をおすすめしますが、現在普通に生活していて異状がないのなら 必要以上に心配はしすぎない方がよいと思います。例えば、人間が普通の生活をしていたら(血液製剤による治療や輸血を受けたり、不特定多数の人と性交渉を持ったりしたら話は別です)、エイズの心配がいらないのと同様だと思います。
    先日、大阪にある犬の繁殖業者が経営破綻して、その施設にいた犬たちにブルセラ病が蔓延していた事が報道されてから、この病気についての問い合わせを数件頂きました。初めてブルセラ病を知られた飼い主さんが心配される気持ちも分りますが、慌てる必要はありません。まずこの病気についての正確な情報を入手して、落ち着いて理解しましょう。
    ある程度ブルセラ病について理解できれば、普通にペットとして飼われている犬にとっては それ程恐れる病気ではない事に気づかれるでしょう。

    (参考)
    ブルセラ病はあまり知られてませんから、極めてまれにしかない病気のように思われるかもしれませんが、実は日本にいる犬の数パーセント(1%という説もあれば5~6%という説もあります)が感染していると推測されています。ですから、ブルセラ病にかかっている犬を飼い主さんは気付かずに飼っていて 何の問題なくその犬が一生を終えるケースが少なからずあるだろう事を知ってください。