よくあるご質問

飼い主さんからよく受ける質問にお答えします。
※10年前に掲載した内容もあり、情報が古い場合もございます。お気付きの点がありましたらご指摘、ご指導ください。

犬のグルーミング


  • アメリカンコッカー(7歳、雄、去勢済み)が、若い頃から患っている外耳炎が治らず困っています。耳の穴に生えている毛をこまめに抜くように病院から指示されましたので、犬用の毛抜きを用意して試してみましたが、嫌がって上手くいきません。上手に毛を抜く方法はありませんか?


    コッカースパニエルは、耳が垂れていて内側までびっしりと毛が生えていますから、耳の穴の風通しが悪くて、外耳炎等の耳の病気の多い犬種です。特に体質的に毛深い犬の場合、耳の穴の中まで毛が密集していたりして、適切な治療を施して一旦症状が無くなっても、直ぐに再発するケースは当院の患者さんにもいらっしゃいますので、正直なところ私も手を焼いています。
    解決策と言うより、少しでも状態を改善する為の方策としては、とにかく耳の穴の換気をよくして、少しでも乾燥させるように努める事で、外耳炎の原因である細菌やカビの増殖しにくい環境を作ることです。具体的には、定期的に(治療中は出来れば週に一回位)耳の内側の毛を刈り込み、穴に生えている毛を除去する事です。耳の穴の毛の除去は健康な状態なら飼い主さんにも出来るかもしれませんが、治療の必要な状況では痛みを伴う為嫌がって難しいでしょうから、無理をせず病院に任せましょう。そして、飼い主さんは毎日の点耳薬の効果的な投与に頑張りましょう。
    以上の事をある程度継続されれば一旦は、外耳炎の症状(痒み、腫れ、耳垢による汚れ、匂い等)が、殆ど無くなると思います。とは言っても、耳の穴の奥の外耳炎を起こしていた細菌やカビを根絶やしに出来たわけではなくて、症状が現われない程度に減少させたに過ぎません。ですから、細菌やカビが増殖する条件さえ揃えば、いつでも再発する可能性はあります。ですから、一旦症状が治まっても、その状態を少しでも長く維持する為に毛の刈り込みと穴の毛の除去を定期的に行う事が望ましいと思います。毛を刈る間隔や毛抜きの使い方、犬の保定の仕方等具体的な事は病院に相談してください。丁寧に指導して貰えない様なら、別の病院を探しましょう。きっと直ぐに見つかるでしょう。


  • 短毛種なら毛の手入れが必要ないと思って、柴犬(3ヶ月、雄)を飼い始めましたが、ワクチンを射ちに行ったときに 病院で毎日のブラッシングと月一回位のシャンプーをすすめられました。手入れをしないと、何か不都合がありますか?


    柴犬などの短毛種は、ポメラニアンやゴールデン等の長毛種、マルチーズやプードル等の人間と同様に毛が伸び続けて定期的なカットは必要な種類に比べると、手入れにかかる労力が少ないかもしれませんが、毎日のブラッシングと定期的なシャンプーは、皮膚や毛を清潔にして健康を保つ為に、必要ですから、是非頑張ってください。更に、飼い主さんが犬にブラッシングとシャンプーをしてあげる事には、他にもいくつかのメリットがあります。まず、飼い主さんと犬のスキンシップをはかれる事です。毎日決まった時間、例えば散歩や食事の後等に、ほんの数分でもいいですから、全身を触りながらブラッシングしましょう。犬と触れ合う事で、心の交流も出来ますし、もし多少嫌がったとしても、辛抱する事を覚えさせる躾の良い機会になるでしょう。全身を触ってあげる事で、例えば気付きにくい小さな外傷やトゲ そしてノミ、ダニ等の寄生虫、将来腫瘍などになるかもしれない皮膚の異常などに気付いてあげられるかもしれません。そして、飼い主さんが想像している以上に、ブラッシングは毛のもつれをとかすだけはなくて、埃や汚れを落としますから、犬小屋や家の中を清潔に保てます。人間の頭髪が一日に相当数抜け落ちる事が御存知だと思いますが、犬はその何倍も全身から抜け落ちます。特に冬毛と夏毛の生え変わる時期には想像以上に多くの毛が抜けて、残っている毛の間に絡んでいますから、その時期には毎日頑張って抜け毛の除去に努めてあげてください。シャンプーは、念入りのブラッシングから始めて、洗い、すすいで、きちんと乾燥させるまで相当の時間がかかりますが、毎日のブラッシングと同様のメリット即ち、スキンシップや躾、そして異常の有無の確認等が出来ます。柴犬の場合,注意して頂きたいのはシャンプーを始める前に念入りにブラッシングをする事です。既に抜けている毛の除去ともつれをほぐしてから洗い始めましょう。もつれたままで洗っても しっかり汚れが落ちませんし、毛が十分に乾燥しにくいので直ぐ嫌な匂いが発生します。シャンプーする時の注意点としては、犬も人間と同様に、例えば脇の下とか股間等が特に汚れていますから、念入りに洗いましょう。尚、シャンプーとすすぎは2回繰り返しますと、汚れの落ち方が断然違います。乾燥は人間用のドライヤーでかまいませんが、表面的に乾いているように見えても、毛の根元の部分に水分が残っていますから、櫛で毛の根元まで熱風を送って、しっかりと乾かしましょう。以上の様に表現しますと、すごく大変な作業に思えるかもしれませんが、犬との親密な関係を作り上げる為には、それなりの努力が必要だと思います。シャンプーについてはペット美容室等に頼まれてもいいでしょうが、毎日のブラッシングは是非出来る範囲で結構ですから、飼い主さん御自身で取り組んでみてください。


  • シェルティ(3歳、雌、避妊済み)を飼っていますが、毛がパサパサでフケが多くて痒がるので、毎日全身をブラッシングし、週に一回丁寧に薬用シャンプーで洗っています。病院でアレルギーと診断され半年ほど治療しましたが、治りませんでした。これから先、どうしてあげたらよいでしょう?


    飼い主さんのペットを思う気持ちがひしひしと伝わってくるご質問ですが、ひょっとすると飼い主さんのあまりに一生懸命な努力が逆効果を生んでいるのかもしれません。実際に診察していないので一般論的なお答えしか出来ませんが、週に一回のシャンプーは間隔が短すぎて、健康な犬でも毛がパサパサになり フケがたくさん発生するかもしれません。毎日のブラッシングもそのやり方や皮膚と毛の状態、もつれ具合等によりますが、不適切な場合は返って皮膚や毛にダメージを与えて 痒ゆみの原因となる場合もあります。先ず、おすすめしたいのは、少なくとも二つ以上の病院で診察してもらって、グルーミングについてのアドバイスを頂き、貴方の犬の皮膚、毛の状態にあった手入れの方法を見つけましょう。例えば、シャンプーにしても種類はたくさんありますから体質に合う物を見つけるのには根気がいると思います。ブラッシングにしても、使う道具を選び、その使い方や力加減をトリマーさん相談し助言を受けながら 勉強してください。大変だと思いますが、ペットに対してすごい熱意をお持ちの方のようですから、きっと上手に出来るようになられると思います。
    「アレルギーの治療をしたが治らなかった。」と表現されていますので、アレルギー反応に対する治療について。
    動物の身体では異物が侵入すると その異物を無害化して体外へ排出する免疫反応が起こりますが、異物により感作を受けて体質が変化してしまうと、本来守ってくれるはずの免疫反応により 身体にとって有害な症状を引き起こして自分自身が被害を受ける場合があり、これをアレルギー反応と言います。さて、犬の痒みを伴うアレルギー反応の治療とは、本来 反応を起こさない体質に戻す根治療法が理想的ですが、現実的に難しいので、まずは現在ある痒みを和らげる対症療法を行いながら、原因物質を見つけ出して 生活の中からその物質を排除します。例えば食物の中の一種であれば、その食材を含まないフードに切り替えればよいし、特定の金属や繊維との接触で反応するならその物質を身辺から遠ざけましょう。原因物質をきちんと排除できれば アレルギー反応は起こりませんから、痒み等の症状も無くなる筈です。
    たった6行でアレルギーの治療について、さらっと説明しましたが、実は原因物質の特定が、飼い主さんの全面的な協力が不可欠の非常に難しくて 時間のかかる作業なのです。本来は 例えば、○○と言う原因物質が特定できて初めて「○○によるアレルギー性皮膚炎」等と診断を下すべきなのですが、飼い主さんは直ぐに診断名を求められる場合が多いので、原因物質を特定できていない段階で とりあえず「アレルギーによる皮膚病」等と表現してしまう獣医師が結構いるみたいです。そして、原因物質を探しているうちに、症状が改善されない事を理由に、治療が途中で終わってしまう事が多いように思います。
    とにかく、皮膚病には特異的で診断しやすい病気もありますが、症状が類似していて診断を下すのに時間のかかる場合が多いので、別の問いで取上げた「インフォームド・コンセント」を実践すべく、じっくりと病状や治療方針についての説明を受けて、理解し納得しながら、焦らずに治療をすすめていかれる事を期待します。