よくあるご質問

飼い主さんからよく受ける質問にお答えします。
※10年前に掲載した内容もあり、情報が古い場合もございます。お気付きの点がありましたらご指摘、ご指導ください。

不治の病


  • シーズー(12歳 雌)を飼っています。4~5年前から腹部に湿疹ができて痒がるので 病院で診察を受けて内服薬を飲ませると一時的には症状が治まるがしばらくする再発を繰り返していました。3ヶ月位前から、目や口の周囲と足先からかさぶたが出来て猛烈に痒がり 一月足らずで胸部から腹部にまで広がりました。病院からは いつもと同じ内服薬と薬浴をすすめられて試してみましたが殆ど改善はみられません。どうすればよいでしょうか?


    数年前から続いていた湿疹の治療にステロイド剤を頻繁に使用されていたのではないかと思いますので、出来たらその病院で確認してください。ステロイド剤は痒みなどの炎症を抑える効果が強くて便利な薬ですが、連用するとその副作用が 動物だけでなく人間の医療でもいろいろと問題になっていますね。
    ご相談のケースでは、ステロイド剤により免疫力が低下した為に 皮膚に常在する寄生虫(毛包虫=ニキビダニ)が増殖したのではないかと思われます。もし、毛包虫症(アカラスという呼称の方が一般的かもしれません)であるなら、ステロイド剤は禁忌となりますから、至急 病院で皮膚の十分な検査を受けましょう。毛包虫症や疥癬症なら割と短時間で結果が解ります。
    もし疥癬症なら、きちんと治療すれば時間はかかりますが完治すると思います。でも、もし毛包虫症で症状が全身に及んでいる場合、完治は難しいかもしれません。
    本来、毛包虫は人間でも犬でも皮膚にごく普通に見られる寄生虫であり、普通に皮膚が免疫力を発揮すれば被害は受けません。しかし、先天的に 或いは薬剤の副作用等により後天的に皮膚の免疫力が低下して、毛包虫が増殖して害を及ぼすようになった場合、皮膚の免疫力と受けたダメージの回復を促す治療と ダニの数を減少させ被害の出ない程度にコントロールしていく治療をバランスよく実施するのは かなり難しい事であるのをご理解ください。(例えば疥癬ダニのように完全に駆逐してしまえる寄生虫の方がずっと簡単です)
    勿論、毛包虫に対する適切な治療を実施すれば 現状のかさぶたや強い痒みを取り除いてあげられると思いますが、その状態を維持する為の診察と必要に応じた治療を根気よく継続しなければならないと思います。
    長年生活を共にしたペットの為に是非 頑張ってあげてください。


  • 3ヶ月前から子猫(生後5ヶ月)を育てていますが、母猫の飼い主さんから 母猫の体調が良くないので動物病院で診察を受けたら、白血病に罹っていることが解ったと連絡がありました。うちの子はとても元気で食欲も旺盛ですが、もし白血病に罹っていたらどうすればよいでしょうか?


    猫の白血病は、白血病ウィルスによる伝染病で、母猫から子猫への遺伝的に感染する可能性が高いと言われていますし、唾液を介しての接触感染 即ち子育てにおいて母猫が子猫の体を舐める行為による感染の可能性も少なからずあります。他に、喧嘩による咬傷や尿を介した感染の可能性もあるようです。症状は、発熱や元気の消失から始まり、食欲の低下、下痢等が続き徐々に体重が減少します。ウィルスにより骨髄の造血機能が異状をきたす為、赤血球が減少して貧血を起こしたり、異常なリンパ球がリンパ節でリンパ腫を形成したり、正常な白血球が減少するので細菌等に対する免疫力が低下して様々な感染症に罹りやすく直り難くなる等の病状を示すようになり、発病すると数年で死に至る恐ろしい病気です。ご相談頂いた子猫が白血病に罹っている可能性は低くないと思いますので、すぐに病院で血液検査を受けましょう。もし検査で陰性と判定されれば一安心ですが、骨髄等に僅かに存在するウィルスはなかなか検出できないので、数ヶ月毎に約一年間は検査を繰り返すことをおすすめします。もし、検査で陽性と判定された場合、一度体内に侵入した白血病ウィルスを根絶する確実な治療法は残念ながらありませんが、体内でのウィルスの増加を少しでも遅らせて 病状の進行を緩やかにする為に以下のような事を注意しましょう。
    1)出来る限りストレスの少ない環境と適切な食事管理を心がけましょう
    (いずれ始まる病状に備えて体力を養成する為です)
    2)他の猫との接触を避けるため外出させないよう気をつけましょう
    (喧嘩や交尾等による外傷や風邪、エイズ等の感染を防ぐとともに、白血病の拡大を抑えるためです)
    3)少しでも症状が現われたら、速やかに対症療法を実施しましょう
    いずれも、飼い主さんの大変な労力と多額の費用を必要としますが 患者さんの残された人生を思って、頑張られる事を期待いたします。

    <白血病予防ワクチンについて>
    白血病のワクチンは、予防効果は高いようですが、既に感染している猫に接種した場合、その病状を進行させる可能性が否定できませんから、事前の血液検査を十分に行い、よほど慎重に用いるべきだと考えております


  • 2歳の雌猫(雑種)を飼っています。食欲が少し落ちていたので、動物病院で診察を受けた所 血液検査の結果 伝染性腹膜炎と診断され、治療法はないと言われました。まだ若くて元気なのに本当に何もしてあげられることはないのでしょうか?


    猫の伝染性腹膜炎という病気はコロナウィルスによる感染症で、白血病、エイズと併せて 猫の三大不治の病と称されます。実は このウィルスによる腸炎は、結構頻繁に発生しますが 殆どの場合猫の免疫力により治癒してしまうようです。しかし、この時期に妊娠、喧嘩等による外傷、ストレス等により免疫力が低下した場合に ウィルスが変異を起こすと、伝染性腹膜炎を発症してしまうと言われています。症状は、浸出型(ウェットタイプ)と言って腹水や胸水が溜まり、食欲不振や呼吸困難を起こす場合と非浸出型(ドライタイプ)と言って主に神経症状(機能障害や麻痺)を起こす場合があります。いずれにしても、発症してしまうと完治することは期待出来ず、抗生剤やステロイド 場合によっては制癌剤等による対症療法により 残された数週間から数ヶ月を少しでも快適に過ごさせてあげることしかできません。ワクチンがありませんし、感染経路もはっきりしませんから予防も難しい恐ろしい病気です。ご質問頂いた方の猫の場合も、肉体的そして精神的にかかるストレスをできるだけ少なくしてあげて、一日でも長く快適に過ごせるよう努力してあげてください。腹膜炎とは一般的には 手術、外傷、内蔵の損傷等により腹腔内を汚染されて起こる炎症を指しますので、ここでとりあげた伝染性腹膜炎とは意味合いが異なります。