よくあるご質問

飼い主さんからよく受ける質問にお答えします。
※10年前に掲載した内容もあり、情報が古い場合もございます。お気付きの点がありましたらご指摘、ご指導ください。

フィラリア症について


  • フィラリアは蚊によって感染すると言うことですが、11月には殆ど蚊は見かけません。何故その時期まで予防する必要があるのですか?


    まず、フィラリアの成長過程を簡単に説明しましょう。フィラリア症に感染している犬の心臓でフィラリアの雄と雌が交尾してミクロフィラリアと言う幼虫を循環する血液の中に産み出します。この幼虫はそのままではこれ以上成長できませんが、中間宿主である蚊がその犬を吸血する時 蚊の体内に入ると成長が始まり約二週間で感染力のある第二期幼虫になります。その蚊が再び犬を吸血するとき、この幼虫は犬の体内に侵入し、約30日で第三期幼虫、更に約30日で第四期幼虫へと成長していきます。更に三から四ヵ月後には心臓に移動して成虫となります。
    飼い主さんはフィラリア予防薬が「まあ成虫は殺せなくても幼虫には全般的に効果があるだろう」と思われている方が多いようですが、月一回投与するフィラリア予防薬は、第三期幼虫にしか効果がありません。
    例えば、9月30日に体内に侵入した幼虫は10月30日から11月30日までの間だけ予防薬の効果のある第三期幼虫であるわけです。ですから、蚊がいなくなっても、11月まで忘れずに予防しましょう。


  • 血液検査で もしフィラリア症に罹っている事が解ったときはどうしたらよいのですか?


    人間は自分の健康管理でさえ、なかなかうまくできないものです。ましてや、犬のこと、どんなに大切に可愛がっていても、うっかりする事もあれば、病気に対する認識が不十分であったりして病気に罹ることは、少なからずあると思います。重要なことは、フィラリア症に限らず病気に罹ったとき どう対処してあげるかではないでしょうか。
    フィラリア症の場合、外科的に成虫を心臓から駆除する方法、薬剤で内科的に成虫を駆除する方法、現在いる成虫はそのままにしてもうこれ以上感染を拡大させない温存療法等があります。どの治療法を選択するかは、その犬の年齢や状態、治療費用等を配慮して、飼い主さんと獣医師が十分に相談すれば、きっと適切な治療法がみつかります。もし、諦めて何もしないでいると、病状はどんどん進行して犬自身も、それをみている飼い主さんもすごくつらい思いをする事になるでしょうから、決して諦めないでください。


  • 親戚の家で生まれた雑種犬の子犬を貰い受けて、飼いはじめました。「フィラリアの予防は必ずして欲しい」と言われましたが、フィラリアとはどんな病気で、どんな予防をすればよいのですか?


    フィラリア(犬糸状虫)とは、主に犬の心臓に蚊を媒介として寄生する20~30cm位の素麺状の虫で、フィラリアに寄生される病気をフィラリア症と言います。フィラリアが寄生しても、最初は殆ど無症状ですが、徐々に血液の循環が悪くなる為、ゼーゼーと咳き込んだり、散歩の途中で動けなくなったり、食欲はあるのに段々体重が減少したりします。更に病状が進むと、呼吸困難、腹水の貯留、四肢の浮腫等が表れ、死に至る恐ろしい病気です。
    フィラリア症の予防は、蚊に刺されないように注意するのも ひとつの方法かもしれませんが、現実的にはかなり難しいことですから、感染の恐れのある時期に予防薬を投与することになります。予防薬としては、毎日若しくは月に一回の内服薬、月に一回の滴下薬、年に一回の注射薬等があります。当院としては、月一回の内服薬と、同じく月一回の滴下薬が安全で確実そして経済的なのでお勧めしています。


  • 犬のフィラリア症を予防する前に、血液検査が必要だと聞きましたが、何を調べるのですか?


    前年の夏を過ごしてフィラリア症に感染する可能性のある犬は、例え毎年予防をしていても100パーセント感染していないとは断言できませんから、血液検査をして感染していない事を確認する事が必要です。何故、フィラリア症に感染していない事の確認がそんなに重要かと思われるかもしれませんが、万が一感染していて、予防薬を投与するとショックを起こして最悪の場合死亡する可能性さえあるのです。ですから、感染していない事を確認してから安心して予防を始めましょう。昨年の秋以降に生まれた犬は今年は検査せずに予防が始められますが、来年からは検査を受けましょう。もし、検査でフィラリアに罹っている事が解っても、それなりの対策がありますから諦めないでください。


  • うちの犬(柴犬、メス、10歳)は 4年前にフィラリア症にかかり手術を受けましたが、またフィラリア症にかかってしまいました。今回も手術をすすめられましたが、高齢でもあり、出来たら手術を避けたいのですが、他に治療法はありませんか?


    犬のフィラリア症の治療法としては次の三つの治療法があると思います。
    一つ目はご質問にもある手術で、頸静脈からかんしを心臓に挿入して虫体を摘出します。一番短時間でフィラリアによるダメージを取り除ける方法ですが、全身麻酔をかけて実施しますし、一時的に身体にかかる負担は小さくありませんから、10歳という年令を考慮すると緊急時でなければ、飼い主さんが心配される気持ちもよく解ります。
    二つ目は、薬剤により殺虫し駆除する方法です。但し、死んだ虫体が血管に詰まって血行障害が起こったりするので、現在はあまり用いられないように思います。
    三つ目は、予防を徹底して新しく寄生されることを防ぎながら、現在寄生している虫体はそのままにして、寿命により死に絶えるのを待つ温存療法です。数年かかる ある意味のんびりした治療法ですが、身体にかかる負担は一番軽くて済むかもしれません。
    どの治療法が、最も適切であるのかは、犬の健康状態やフィラリア症の病状、治療及びその後にかかる手間や費用、そして飼い主さんの気持ち等デリケートな要素が絡みますから、ここで簡単にはお答え出来ませんが、これまで診療されてこられた先生ともう一度よく相談されることだと思います。手術についての説明を求め飼い主さんの心配される気持ちを伝えて、納得できる結論を出されるべきだと思います。もし、納得できなければ他の病院とも相談されて十分に納得されてから治療をされる事をおすすめします。
    最後になりましたが、フィラリア症という病気は予防しなければ何度でもかかりますし、変形してしまった心臓は治療しても 元に戻りませんからどんどん寿命を縮めてしまいます。ですから、今後は是非予防の継続を心がけてあげてください。


  • 最近は犬のフィラリア予防法にいくつも種類があるようですが、どのやり方が一番効果的ですか?


    病気の予防というのは、その処置によって病気にかからずにすむことを目標としているわけで、言ってみれば何もなくて当たり前のことですから どの方法が効果的かという質問にはお答えし難いのですが、その処置の安全性と簡便性についてはある程度比較検討できるかもしれませんのでそのあたりを基準にして判断されたらいかかでしょうか。まず、犬のフィラリア症の予防薬には、毎日もしくは月一回の内服薬、月一回の滴下薬、六ヶ月に一回の注射薬の三タイプがあります。簡便性を考えれば、勿論注射薬が一番優れていると言えるでしょう。続いて月一回即ち1シーズンに7~8回の内服薬及び滴下薬であるのかもしれませんが、毎日習慣的に投与する方がうっかり忘れる心配がなくてかえって便利であると言う考え方もあるようです。尚、滴下薬はノミ駆除作用もあるのでフィラリア予防とノミ駆除を別々に実施する場合に比べると手間と費用を省ける点で利点は大きいと思います。
    安全性については、副作用などの心配がなくて全く安全な薬なんてものはこの世に存在しないと思いますが、フィラリア予防の内服薬は きちんと血液検査さえ実施してから用いれば 非常に安全性の高い薬剤であると これまでの数十年にわたる実績から言えると思います。(但し、血液検査を実施しなければ結構危険な薬ともいえると思います)滴下薬については発売されてからの期間が短いのですが、現在までのところあまり深刻な副作用についての報告は聞いておりませんので、それなりに安全な薬だと判断しております。(私は正直に申し上げてあまり勉強熱心ではありませんので、何かその種の情報をお持ちの方がおられましたら是非教えてください。)注射薬については、日本で初めて発売された年に全国的に少なからぬ死亡例が発生して、新聞にも大きく取り上げられましたから、記憶されている方も多いと思ます。製薬会社からは 原因などについてのきちんとした説明も殆ど無くて、一旦は回収されましたので二度と使用されることもないだろうと思っておりました。ところが、その便利性の為 一部の病院からの要望で再び流通するようになり、使用されているのが現状です。治療に用いる薬剤は、その主作用によるメリットと 副作用によるデメリットを天秤にかけて比較検討する場合もあるかもしれませんが、予防に用いる薬剤は安全性を最重要視するべきではないでしょうか?ですから、私は獣医師として、注射によるフィラリア予防だけは絶対におすすめ致しません。
    以上のことから、ご自分にとって 最も有用な予防法を考えて 選んでください。