よくあるご質問

飼い主さんからよく受ける質問にお答えします。
※10年前に掲載した内容もあり、情報が古い場合もございます。お気付きの点がありましたらご指摘、ご指導ください。

ドッグフードの品質


  • 人間の食物で原材料や産地の偽装が相次いでいますが、ドッグフードの袋に表記されている原材料や保証分析値は信用してもいいのでしょうか?


    関西の人間なら誰もが一度は食事をしてみたいと憧れていた「吉兆」というお店がお客さんの信頼を裏切っていました。少し前なら、雪印や日本ハム、不二家そして歴史のある赤福や世界中何処にでもあるマクドナルドといった誰もが知っていて少なくとも何度かは口にした事のある食品メーカーが消費者に嘘をついていました。
    現在の所、人間の食物よりも多少は軽く考えられてもしょうがないのかもしれない立場のペットフードメーカーに対して飼い主さんがより一層の不安や疑問を持たれるのは当然かもしれません。
    私に限らず普通の開業獣医師は正直申し上げてペットフードメーカーの方たちと直接のお付き合いは殆どないと思います。病院で扱っている一般食(ペットショップ等の一般のお店でも販売しているフード)にしても処方食(病気の治療や予防を目的とする動物病院でしか販売していないフード)にしても薬品を仕入れている問屋さんから購入するからです。
    ただし、処方食については新製品が発売された時などにフードの説明を兼ねた講演会が開かれたり、病院に簡単な勉強会のような形で出向いてきていただいて直接説明を受けたりする事があります。講師は獣医師さんなので製品についてやフードについての私達が普段から抱えている疑問にごく初歩的なことからかなり専門的なことまで教えてもらったりする事もあります。
    その様な機会はそれほど多くはありませんが直接のお付き合いのあるメーカーについてはやはり他のフードメーカーよりも信頼をおいてしまいます。従って、当院で処方食として扱っているフードメーカーは限られています。
    一般食についても飼い主さんにおすすめする、つまり私が信頼をおいているフードメーカーは「ヒルズ」「アイムス」「プロプラン」の三社です。申し訳ないけれどそれ以外のメーカーは基本的に飼い主さんにおすすめしません。(これはあくまでも私がこれまでの乏しい経験や先輩方からの意見を参考にしたうえでの判断ですのであしからず)
    勿論この三社にしてもこれまでにも消費者レベルでのトラブルが全くなかったわけではないですし今後も何らかのトラブルが発生する可能性は否定できませんので参考にしていただければ幸いです。
    尚、フードの保証分析値は正直言って私もそんなに信用していません。理由はそのメーカーにとって都合よく表示する事(保存料等含まれているものを省略する事や実際には含まれていない成分を含まれているかのように表示する事)が割と簡単に出来るという話を聞いたことがあるからです。賞味期限についても申し上げましたが、あまり細かい数値やデーターに振り回されないで飼い主さんが冷静に対応される事を期待します。


  • 賞味期限を過ぎてしまったドッグフードでも、人間より嗅覚の優れた犬が普通に食べれば安全であるという話を聞きましたが、本当ですか?


    賞味期限とは、フードメーカーが独自で決定した未開封で定法で保存した場合のフードの品質を保証する期限です。その期限内ならドッグフードとして安心して犬に与えられる品質をメーカーが保証するという意味であり、それ以上でもそれ以下でもありません。
    ですから、期限内であっても保存方法に問題があったり、フードをつくる段階で何らかのトラブルがあったりして、期限内にフードとしての品質を保てなくなる可能性が全くない訳ではないのです。だから期限内であっても、飼い主さんがフードを与える時に自分の視覚や嗅覚、触覚を働かせて何時もと変わりないことを確認されるべきだと思います。
    尚、一食分ずつ小分け包装していないドライフードの場合、開封した時点で賞味期限の定義からは逸脱するわけですから、賞味期限はあくまでも目安にしか過ぎなくなることをしっかりと認識しておきましょう。
    逆に、期限が過ぎたからと言ってフードが直ちに変質して不適格になるという意味でもありません。ですから、その期限を過ぎてもある程度の期間はフードとして使用できるかもしれませんが、それはケースバイケースですから、一概に論じられません。
    要するに、賞味期限と言う言葉の意味する所を過大評価せずに現実的に理解してそんなものにあまり振り回されずに生活して頂きたいのです。人間の食べ物が賞味期限を過ぎた場合を考えてみましょう。賞味期限を鵜呑みにしてしまう人なら何でもかんでも直ぐに処分してしまうかもしれませんし、自分の五感で調べてみて大丈夫と判断したら慎重に食べる人もいるでしょう。賞味期限なんて全く気にしないでムシャムシャ食べる人もいるかもしれません。うっかり品質の劣化したものを食べて嘔吐や下痢といった被害を受けるかもしれませんが一度その様な経験をすればより正確に食べてよいか悪いかの判断が出来るようになるかもしれません。動物相手とはいえ医療に携わるものがこの様な発言をするのは不謹慎かもしれませんが、何を信用してよいか判断の難しい現在、頼れるのは実践的な知識や経験に基づく知恵だと思います。
    ドッグフードが賞味期限を過ぎてしまった場合でも同様ではないでしょうか。まずは飼い主さんが調べてみて大丈夫と判断したら慎重にペットに与えて様子をみてもいいのではないかと思います。質問にあるとおり犬は優れた嗅覚を持ちますから確かに人間よりもフードの品質の劣化をより正確に感じ取る事が出来るかもしれません。但し、あくまで犬は犬ですから、品質の劣化を感知しても食欲を優先してしまうかもしれません。ですから、普段と同じ様に食べればまず大丈夫でしょうが少しでも普段と異なる反応を示したら廃棄される事が望ましいのかもしれません。
    獣医師の立場としては賞味期限を過ぎたフードは直ぐに廃棄する事をおすすめすべきかもしれません。でも、犬にも食べてよいものか悪いものかの判断する知恵は必要だと思います。
    例えば、朝与えたフードが普段は直ぐに食べきるのにたまたま残って夕方には腐敗していたようなケースを想定してみましょう。安全なフードしか食べた事がなければ何時もの器にはいっている何時ものフードですから何の疑問持たずにそのまま食べてしまって中毒を起こすかもしれません。でも、品質がいくらか劣化したフードと対面した事がある犬なら躊躇して食べる事を断念するかもしれません。
    こんな事はあくまでも仮定の話ですが、犬も色んな経験を積む事によって色んな知恵を身に付けて成長するのではないでしょうか。
    以上は私の個人的な意見ですから、ある程度賛同していただける方もいらっしゃるかもしれませんし、全く理解して頂けない方も多いと思います。別に自分の考え方を偉そうに押し付ける気持ちはありませんが、大事なペットでもあまり過保護に育てないで多少は危険を伴うかもしれないことを経験した方が逞しくて賢い動物に成長するように思います。


  • 人間の食べ物で、賞味期限についての不正が次々に起こっていますが、ドッグフードに記載されている賞味期限は信頼できますか?


    人間の世の中で 生きていくうえで一番根本的な問題である食物について われわれ庶民の信頼を裏切るような出来事が次々に起こっています。考えようによっては 人間の食物ですら信頼していいのか判断が難しくなっている昨今、ドッグフードの品質について飼い主さんが不安を持たれるのは当然かもしれません。只、私は一介の開業獣医師に過ぎませんから、ペットフードメーカーとは全く関わり合いのない立場です。ですからペットフードメーカーについてどの程度信頼できるかと問われても正直申し上げて正確なことは分かりません。

    勿論私も人間の食品については自分が直接関係することなのである程度は勉強しましたし、これまでの仕事の関係で一般の飼い主さんよりはペットフードについての知識がありますのでそれらを総合してわかる範囲でお答えします。
    まず、「賞味期限」と言う言葉を理解する為に、その定義を示します。
    「賞味期限とは、容器包装を開かれていない製品が表示された方法で保存された場合に製品としての品質を十分に保持できる期限を示す年月日の事」少し解り易い表現にすると、「缶詰やドライタイプのドッグフードを 開封しない状態で 直射日光の当たらない風通しの良い場所に保管しておくならば、ドッグフードとして安心して犬に与えられる期限を示す年月日」位になると思います。この賞味期限は、缶詰やドライフードといった形態についてそれぞれに 監督するお役所が定めている訳でないし、こういうものならこれだけと定めた法律が存在する訳でもありません。ドッグフードメーカーの団体が経験に基づいて、若しくは研究所などが実験に基づいて一律に設定している訳でもありません。そのフードを製造したメーカーが独自の判断で自由に決めることが出来ます。各メーカーが独自に実験したり、それまでの経験や情報に基づいて自らの信用を賭けて決定するものですから、消費者としてはそれなりに信頼するしかないと思います。尚、勘違いされているケースが多いのは、賞味期限は開封しない状態での品質を保証する期間ですから、開封してからは賞味期限より前に何か異常が見つかってもフードメーカーに責任は問えませんし 飼い主さんが自分の責任で判断して与えるかどうか決めてください。